産後のメンタルにひそむ危険!産後の変化を知って産後ママをサポート
産後のメンタルにひそむ危険!産後の変化を知って産後ママをサポート
この記事を読むための時間:4分
出産を終えたお母さんは幸せいっぱいに見えますが、実は、メンタル面で不安定な要素を抱えています。
出産によるダメージやホルモンバランスや環境の変化など様々な要素が待ち受けているからです。
ここでは、産後のメンタルについて3つの変化から見ていきます。
これから出産を控えている人は今後のイメージとして、周囲にそうした人がいる人は、サポートできるきっかけとして参考にしてみてください。
産後のメンタルはどんな状態?
産後は出産を無事終えた安心感と赤ちゃんを抱いた幸福感などがある一方で、大きな落ち込みを経験するときでもあります。
産後、慣れない育児によりメンタル面で不安定になることは多くのママが体験することでしょう。
しかしその落ち込みが続く場合には「マタニティブルーズ」や「産後うつ」などの可能性も出てきます。
産後うつは出産を経験した女性の10人に1人が経験するといわれています。
産後うつは、産後2~3週間~6か月の間で発症するといわれており、1か月以内での発生率が8.5%(2016年:厚生労働省推計)です。
また、症状は普通のうつと同じように、憂鬱な気分が続いたりなにをしていても無気力になったりするなどの症状があります。
とりわけ産後うつの場合には焦燥感が強く傾向があるようです。
国立成育医療研究センターの平成27~28(2015~2016年)年の調査によれば、妊産婦の死亡の中で最も多いのが、産後の自殺によるものでした。
産後うつになるかどうかは、もともとの性格やメンタルヘルスに関する既往歴なども関係します。
産後うつになってしまうと、先のような本人の自殺の危険性もあるとともに、子どもへの虐待なネグレクトなどへのリスクも高まるでしょう。
こうしたリスクを懸念し、厚生労働省が2017年8月に産後ケアを広めるためのガイドラインを公表しました。
そのため自治体などでは、助産師などの専門家による育児相談や指導などを行う産後ケア事業がすすめられています。
まら、産後2週間以内におさまる激しい気分の浮き沈みの場合には、「マタニティブルーズ」の可能性も考えられるでしょう。
「マタニティブルーズ」はホルモンバランスの変化で起こる一過性の症状です。
産後は、出産による身体へのダメージやホルモンバランスの変化、環境の変化などによって、心の健康がおびやかされる可能性があります。
それぞれどんな風に産後のメンタルに関係しているのか、詳しく見ていきましょう。
出産による身体へのダメージがメンタルに及ぼすもの
出産は分娩時間・出産方法、環境など人によって様々です。
また経産婦であっても経験するたびに違うともいいます。無痛分娩や和痛分娩、陣痛促進剤の使用や帝王切開など、出産に至るまでのプロセスは様々ですが、いずれにしても完全無傷で出産するケースは稀です。
どの人も、出産により多かれ少なかれ身体はダメージを受けています。
出産後は、陣痛に耐えた疲れや切開の痛みがでてきたり、胎児を排出するさいに骨盤底筋が傷つくことで臓器の下垂や尿漏れなどのトラブルがでてきたりします。
帝王切開やその他リスクの高い出産を経ている場合には、さらに身体へのダメージは大きいです。
また出産を終えてから6週~8週間の産褥期は、時間をかけて徐々に体を戻していく時期のため、無理をせずにゆったりと過ごします。
しかし、上に兄弟がいたり、頼れる人が周囲いなかったりすれば、ゆったりと過ごすこともできず、動かざるを得えません。
かりに協力を得られたとしても、母乳育児をする場合には母乳を出すために頻回授乳が必要になるため、寝不足になることもあります。
赤ちゃんの性格によっては、夜よく起き、よく泣くなどで抱っこの回数が多く、疲労感がケースもあるでしょう。
こうした身体のダメージはメンタルへの影響も大きいです。
身体に痛みや疲れがあったり睡眠不足が続けば脳の判断力も低下しますし、産前と同じように動けないことによりイライラしたり自分を責めたりすることもあるでしょう。
出産や出産以前の既往症がある場合には、そうした症状が悪化する可能性もあります。
休むこと、食べることの2本柱を基本として、出産による身体のダメージは、しっかりと回復させていかなければなりません。
最低限の衣食住がまかなえるようであれば手を抜き、身体を休めるようにする、ママじゃなくても平気なもの(沐浴、おむつ替え、兄弟の世話、家事炊事)は他の人がするなどして、休める時間を作りましょう。
経産婦の場合には、経験しているから大丈夫だろう、と本人も周囲も思っている場合も多いため、気づかないうちに疲れがたまっている場合もあります。
ある程度落ち着いてからどっと疲れが出てしまう場合もあるため、注意が必要です。
身体が中々回復しない場合は、自治体の産後ケアサービスなども利用しましょう。訪問型や滞在型など、用途に応じて使い分けられます。
積極的に使い、身体のダメージを回復させましょう。
ホルモンバランスの変化によるメンタルの変化って?
産後は女性ホルモン(黄体ホルモン・卵胞ホルモンの)急激な減少により、精神的に不安定になりやすい時期です。
ホルモンバランスによる変化で精神が大きく浮き沈みすることを「マタニティブルーズ」といいますが、これは女性ホルモンの減少が原因だと考えられています。
女性ホルモンのひとつである黄体ホルモン(プロゲステロン)は赤ちゃんに栄養を送るために胎盤を完成させるホルモンです。
また子宮の収縮を抑制し流産を防いだり乳腺を発達させたりする役割もあります。
黄体ホルモンは妊娠8~9月が分泌のピークです。それ以降は減り続け、出産時胎盤の排出とともに激減してしまいます。
一方、卵胞ホルモン(エストロゲン)は胎児の成長にあわせて子宮を大きくし、母乳を運ぶ乳管を発達させるホルモンです。
このホルモンも出産後に激減します。こうした女性ホルモンの分泌量が減ることで、肌や髪のうるおいが減るため、この時期に鏡を見て自分の顔つきが疲れて見えて落ち込む人も少なくないようです。
その他のホルモン、授乳を促進するホルモンのプロラクチンは、妊娠中はエストロゲンにより抑制されていますが、出産後はエストロゲンの減少により分泌されるようになります。
プロラクチンは乳腺を発達させ、母乳生成を促進、母乳の分泌を助けるホルモンです。
搾乳刺激により分泌されます。同じく搾乳刺激で分泌されるオキシトシンというホルモンは、別名幸せホルモンです。
ストレスを緩和して幸せな気持ちにさせるといわれています。
このように、様々なホルモンが短期間に増減し、産後のママの身体を妊娠中の身体から赤ちゃんを育てる身体に変えていくのです。
短期間に大きな変化が起こるため、精神的に不安定になるケースもあるでしょう。
とはいえ、産後のホルモンバランスの変化は、徐々に落ち着いていくものです。
もし気分の激しい落ち込みなどがずっと続く場合には、ホルモンバランス以外の影響も考えられます。
環境の変化によるメンタルの変化
出産により産後ママは様々な環境の変化にさらされます。
産後3週間は家で安静にすごすことがすすめられるため、家の中にとじこもりがちになります。
このとき、社会に取り残される不安も抱える人も少なくありません。
外に出かけることができるようになっても、赤ちゃんの様子が気になったり、出かけ先が限られたりして、不自由に思いストレスを感じる人もいるでしょう。
また病院から自宅へ、あるいは実家から自宅へ帰るときなどは、環境が変化することで不安を覚えることもあります。
病院や実家では誰かがいて、場合によっては赤ちゃんを預かってくれたけれど、自宅に帰って頼れる人がない。
自分ひとりで世話をしなければならない、という場合などは、特に不安を感じやすいでしょう。
初産の場合には育児が軌道に乗るまでが大変ですし、上に兄弟がいる場合には、他の兄弟との兼ね合いが大変です。
出産を期に仕事を休職・退職した場合、引っ越しなどをした場合には、人間関係や住宅環境の変化が重なり、育児のみならず生活の立て直しに時間がかかるケースもあるでしょう。
仕事の面では母親になったとたんに周囲から扱いが変わることもあり、戸惑う可能性もあります。
さらに経済的な不安の強い環境だと、今後子育てしていくうえで大丈夫かなど、先のことまで不安に思うケースも多いでしょう。
産後はさまざまな環境の変化を経験しますが、このときに環境に適応できなかったり、孤立感を深めていってしまったりすると、危険です。
育児を母親に任せる社会環境もあり、責任感が強かったり真面目な人は特に、母親としてしっかりとしなければ、と張り切りすぎて、精神的のバランスを崩してしまう可能性があります。
また、分娩の方法や育児の方法、子どもを預けることになどに対する周囲への声が、産後のママを不安にさせる要因の場合もあるでしょう。
周囲も本人も、出産や育児は人それぞれであると認めることで、心に余裕ができます。
ママがひとりで抱え込むことなく、環境全体で子どもを育てられるように、産後ケアサービスや保育園の一時保育など、頼る先を調べておくことも大切です。
そもそも子育てはひとりではできないものだ、と割りきることで、積極的に周囲に頼ることができるでしょう。
産後の変化を知って、産後のメンタルバランスを保とう
出産により自分自身の身体や環境が変わることで、メンタルに不調を抱えるママもいます。
ただ、自分だけが大変な思いをしていると思うよりも、他の人も多かれ少なかれ経験しているものだ、と分かることで安心できる面もあるでしょう。
また周囲の人は、ママの抱えるメンタル面でのリスクを理解しサポートするためにも、産後のママに起こる変化について知っておくことは大切です。
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